ウィリー練習始めたての方でスプロケットをまだカスタムしていない方、朗報です。以前より劇的にウィリーがやりやすくなる方法をお教えします。
この記事を見れば以前とは見違えるほどウィリーの角度が変化したことに驚くと思います。人によっては捲れることもあると思います。ウィリー練習にとって捲れることは上達への近道です。多分ここ記事で誰かが言っていました。知らんけど。またそれと同時に、大幅に丁数を挙げた方は壁にぶち当たるでしょう。なぜかはPart3で説明します。Part3の記事はこちら!(近日中に公開)
Part1では、ギア比などを実際の数値を用いて理論的に説明し、各ギアの関係性から導くことのできる理論速度について、式を用いて説明します。
Part2ではPart1で説明した理論を用いて、実際にスプロケットを変更するとどの様な変化が起きるのか解説していきます。
Part3ではおすすめのスプロケットや購入方法、Shopなど紹介します。
スプロケットが与えるウィリーへの影響
バイクにおけるスプロケットの役割は、主に駆動軸からの運動を伝達させる役割があります。
バイクにはスプロケットが二種類あり、原動機側の駆動元がドライブスプロケット、リアホイールに取り付けられている駆動される側がドリブンスプロケットといいます。形は上記の画像に掲載している通り、歯車です。基本的に駆動元側のスプロケットの方が歯数が少なく、ドリブンスプロケット側の方が歯数が多いです。
すでにお気づきの方もいると思いますが、このドライブスプロケットとドリブンスプロケットの比率、つまりギア比がウィリーのしやすさに関係してきます。
そもそもギア比が異なるとどのような現象が起こるのか理解する必要があります。
例えばAが10丁の歯車、同じくBも10丁の歯車があったとします。この際におけるAとBの相関関係は、比が 1:1 であるということです。
つまり、Aが1回転するごとにBは同じく1回転します。
さて、Bの歯車の丁数が2倍の20丁になったらどうなるでしょう。
Aが10丁でBが20丁になり、この際におけるAとBの相関関係は「1:2」 となります。
これは、Aの1回転に対してBは2回転するということになります。
カタログスペックから読み取るギア比
上記に記したものがギア比の基礎的となる知識です。しかしながら、バイクなどにおけるギア比は、大きく分けて2つあり、トランスミッションギア比とトランスミッションギア比や、1,2次減速比などを考慮した総合ギア比があります。これらのギア比は上記のような「1:2」と表記されることはなく、1.xxx や 2.xxx と表されます。総合ギア比とは、各ミッションの伝達を終えたのちに、実際にタイヤが1回転するのにエンジンが何回転するのか表した比です。
トランスミッションギア比とは?
トランスミッションギア比(変速比)とは、変速機(ミッション)の1速や2速などに応じたエンジンの回転数と後輪の回転数の比率を表したものです。
例を挙げるためにCBR600F4iのスペックを用いて説明します。以下、CBR600F4iにおけるトランスミッションギア比の表です。
表1 各ギアごとのトランスミッションギア比
ギア | トランスミッションギア比(変速比) |
1速 | 2.833 |
2速 | 2.062 |
3速 | 1.647 |
4速 | 1.428 |
5速 | 1.272 |
6速 | 1.173 |
上記の値はエンジン出力シャフト側の駆動ギアと、トランスミッション内における従動ギアの関係を表したトランスミッション側のギア比です。これらのギア比は次式によって算出できます。
トランスミッションギア比=従動ギアの歯数/駆動ギアの歯数・・・①
この①式より、CBR600F4iにおける1速の減速比を生み出す各ギアの歯数を近似することができ、以上の関係を式に表すと次のようになります。
1速トランスミッションギア比 = 43/15 ≈ 2.866・・・②
あくまで近似の値なので、実際の値とは異なります。
実際にタイヤが1回転するのにエンジンが何回転するのか表した比の算出
さて、ここまでトランスミッションにおけるギア比の解説を行いましたが、実際にバイクに乗る際にはエンジン側についているドライブスプロケット(混同させないために以後フロントスプロケットという)と、リアホイール側のドリブンスプロケット(以後リアスプロケットという)のギア比も考慮しなければなりません。
最終的に、トランスミッションを介して入力されたエンジン側の回転が、リアタイヤに出力する回転数は次式によって求められます。
総合ギア比=トランスミッションギア比×リアスプロケット歯数/フロントスプロケット歯数・・・③
CBR600F4iのカタログより、フロントスプロケットは16丁、リアスプロケットは43丁とでてきました。
総合ギア比は③式より求められ、リアスプロケットとフロントスプロケットの比は定数として考えることができるので、各ギアにおける総合ギア比は、上記表に記載しているトランスミッションギア比を代入することで、求めることができます。
まず、スプロケットの比(2次減速比)を算出します。
スプロケット比=43/16=2.6875・・・④
スプロケットの比、2.6875は固定の値なので、求めたいギア数のトランスミッションギア比を代入することで総合ギア比を求めることができます。試しに、1速の総合ギア比を求めてみます。
1速総合ギア比=2.833×2.6875=7.614…..・・・⑤
⑤の式より、1速の総合ギア比は約7.614であると分かりました。
この7.614という数字は、エンジンが約7.6回転する間にタイヤが1回転することを意味します。
以下に各ギアごとの総合ギア比を表にしたものを載せます。
表2 各ギアごとの総合ギア比
ギア | 総合ギア比 |
1速 | 7.614 |
2速 | 5.542 |
3速 | 4.426 |
4速 | 3.838 |
5速 | 3.419 |
6速 | 3.152 |
また、2次減速比があるように1次減速比も存在します。これはエンジン内部のクランクシャフトからトランスミッションに動力が伝わる際の最初のギア比を指します。これについては歯数が公表されていません。代わりに1次減速比は公開されており、その値は1.822です。この数字は、クランクシャフトが1.822回転するときにメインシャフトが1回転するという意味です。
総合ギア比が分かると任意の回転数での速度が計算できる!
バイクにおける理論的な速度はエンジンの回転数にギア比、そして後輪の直径に依存しているので、それぞれの値が分かれば算出することができます。バイクにおける速度の式は次のように示されます。
速度[m/s]=エンジン回転数[rpm]×後輪の円周[m] /1次減速比×総合ギア比×60[s]・・・⑥
エンジン回転数は任意で、総合ギア比、また1次減速比は既に求めているので後輪の円周を求める必要があります。
後輪の円周は純正タイヤのサイズから計算します。このタイヤサイズから円周を求めるための円直径、もしくは半径を求める必要があります。ご自身で計算する際は以下の画像を参考にしてください。
CBR600F4iの場合では純正リアタイヤサイズが180/55ZR17でした。
上記の計算方法より次式を使ってタイヤ円直径を求めました。1[in]=25.4[mm]の場合
タイヤ円直径={2×(180×0.55)}+(17inch×25.4)=198+431.8=629.8[mm]=0.6298[m]・・・⑦
タイヤ円直径は0.6298[m]と分かりました。次にタイヤの円周を求める式に代入します。中学もしくは小学校で習う内容なので分からないことはないと思いますが、一応記述しておきます。円周率πは3.14を使用します。
円の外周[L]=直径[d]×π もしくは 半径[r]×π×2= 0.6298×3.14=1.977572 ≈1.98[m]・・・⑧
⑦式ですでに直径が分かっていたので直径を用いた式、L=dπを用いて計算しました。計算結果によると、180/55ZR17のタイヤにおける円周長さは1.98[m]とわかりました。
CBR600F4iにおけるレブリミットが10,500[rpm]なので、各ギアでのMAX速度を計算してみたいと思います。まずは1速です。総合ギア比は⑤式、もしくは表2を参考にしてください。
速度[m/s]=エンジン回転数[rpm]×後輪の円周[m] / 1次減速比×総合ギア比×60[s]・・・⑥
おさらいですが、この⑥式が速度を求める式です。それではそれぞれ求めたパラメーターを代入していきましょう。
- エンジン回転数 10,500[rpm]
- 後輪の円周 1.98[m]
- 1次減速比 1.822
- 総合ギア比(1速) 7.614
- フロントスプロケット 16丁
- リアスプロケット 43丁
1速における最高速度[m/s]=10,500[rpm]×1.98[m] /1.822×7.614×60[s]=24.987…[m/s]・・・⑨
=89.953[km/h]
⑨式により、1速のレブリミット10,500[rpm]における最高速度は約90[km/h]となりました。各ギアにおけるレブリミット時の最高速度を求めるには、総合ギア比のみ変えてあげればいいのですぐに算出できます。また、以下に各ギアごとのレブリミットの最高速度を表にしておきます。
表3 各ギアごとのレブリミット時の最高速度
ギア | 総合ギア比 | 最高速度[km/h] |
1速 | 7.614 | 89.953 |
2速 | 5.542 | 123.64 |
3速 | 4.426 | 154.69 |
4速 | 3.838 | 178.38 |
5速 | 3.419 | 200.24 |
6速 | 3.152 | 217.21 |
Part1 まとめ
以上、CBR600F4iのカタログスペックを用いたギア比の解説や、スプロケットや各種ギア比が純正状態における理論最高速度の解説でした。
大事なことなので念押ししておきますが、あくまで理論的な最高速度であって、現実には様々な要因が重なり損失が生まれます。(空気抵抗やライダー含む積載物の重量、またタイヤ空気圧やチェーンなどの機械的損失等)
バイクスタントでは、ウィリーをやりやすくするためにスプロケットを交換することがあります。しかしながら、なぜ交換するのか、交換するとどのようなことに影響を及ぼすのか、理解しておく必要があります。
今回は基礎知識を養うために、純正状態における速度とギア比の説明を行いました。
Part2では実際にスプロケットの丁数を変更してみて、純正状態の理論値とどのような変化、違いがあるのか、またトルクや速度など求めながら評価していきたいと思っています。
Part2のリンクはこちら!(近日中に公開)